平成28年度市政運営方針を説明

2016年2月25日に、伏見市長は「平成28年度市政運営方針[1]」を説明しました。2015年10月の所信表明ほどの注目はされていないようですが、むしろ、これからの変化に注目しなければなりません。

議員の反応は後回しにして、筆者なりに特筆すべき箇所を抜き出しました。

全員協議会でどんな議論が行われたか

市政運営方針の中に「美術館」の文字はありません。筆者にとってはどうも、その理由を推し量ることができません。というのも、2016年1月の全員協議会で美術館問題について議論され、議員のブログなどでのコメントを紹介[2]しました。筆者は次のステップへ移るだろうと予想していましたが、市政運営方針で言及されませんでした。市長はどこかへ投げたボールを待っているのか、それとも議論がこうちゃくしているのか、ちょっと読めません。

一応、代表質問の要旨に挙がっています。だからといって市長が言及しないことについて誰もが不思議に思うことだと決めつけてはいけません。市民がまだ断片的な情報しか知らないことを逆手に取り、議員らにとって有利な方向へ事を運ぼうとする策略をしている可能性があるので、注意が必要です。

1.美術館問題等の議論のある重要施策に市政運営方針で触れない理由について

枚方市議会 平成28年3月定例月議会 代表質問,大塚光央議員(連合市民の会)

ちょうど良いところにマスメディアが取材していた記事を発見。朝日新聞はきちんと寄付者に取材をしている一方、全員協議会の取材はちゃらんぽらんで、市長が言及しなかった理由は分かりませんでした。役得なのに人の役に立たないところはさすがです。

枚方市・市立美術館計画が「白紙」になったわけは・・・ pic.twitter.com/GJvkifdCKo

— 乱調 (@rantyo3141) 2016年2月28日

ここは、会議録の公開を待ってどのような議論が行われていたかを確認するしかなさそうです。代表質問後にブログなどで議員がコメントをすると思いますが、今の時点であまりそれを鵜呑みにしないほうがいいと思います。

ブレない

1.人が集まるまちづくりの推進

(1)枚方市駅周辺再整備など都市基盤整備の充実

(略)

(2)安心して楽しく子育てできる環境の充実

核家族化といった社会状況の変化に伴い、家庭での子育て力が低下している中で、三世代家族の定住を促進するため、市外在住の子育て世帯が市内在住の親世帯と同居・近居する場合の住宅のリフォームまたは購入の助成を行うとともに、高齢者の持ち家を子育て世帯に貸し付けるマイホーム借り上げ制度の普及を関係機関等と連携しながら進め、子育て世帯の転入増加をめざします。

平成28年度市政運営方針

枚方市駅周辺の活気を取り戻すことにブレはありません。

人口減少への対策として「三世代家族の定住」を掲げています。公約にもありました。

●定住促進・人口誘導プロジェクトチームを設置し、3世代同居世帯への優遇策など人口増施策に重点的に取り組みます。

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同居にこだわっている様子ではなく、近居を含めて幅を利かせています。

“犯罪のないまち”をどう実現するか

1.安全で、利便性の高いまちを築きます

地震をはじめ台風や豪雨など、自然災害が全国各地で発生する中で、だれもが安全で安心して暮らすことができるよう、市民の防災意識の向上に取り組むとともに、警察や地域などと連携し、犯罪のないまちをめざします

災害時における対応を強化するため、老朽化している枚方消防署中宮出張所の建て替えに取り組みます。併せて、自助・共助を促進するため、さまざまなイベントに防災ブースを出展するなど、防災意識の向上を図るとともに、校区コミュニティ協議会及び校区自主防災組織の訓練や研修会が効果的に実施されるよう支援します。また、災害時においては、医療救護活動に関する調整等を行う地域災害医療本部を保健所に設置します。

防犯意識の向上を図るため、枚方市防犯協議会や枚方・交野両警察署と連携した各種防犯キャンペーンを開催します。

通学路の安全確保を図るため、平成28年度中の完成に向け、中宮第2号線の拡幅工事を進めます。安全な交通環境を確保するため、岡東山之上東1号線や楠葉中央線、中宮津田線等のリフレッシュ工事を実施し、引き続き、藤阪駅周辺の歩道のバリアフリー化工事を進めます。また、施設の老朽化に伴う安全性の確保やライフサイクルコストの縮減を図るため、長寿命化計画に基づき、橋梁及び公園施設の点検や修繕、耐震化などを実施します。

子どもたちの交通事故防止を図るための取り組みとして、全小中学校で自転車の交通安全教室を実施するとともに、特に中学校においては、昨年試行的に実施したスケアードストレート交通安全教室を引き続き実施します。

水道事業では、安全な水道水を安定的に供給するため、中宮浄水場の更新に向けた用地取得を行うとともに、水道施設・管路の更新及び耐震化を効率的かつ効果的に進めるため、上水道施設整備基本計画の平成30年度策定に向けた取り組みに着手します。

また、下水道事業では、下水道施設を将来にわたり適切に維持管理していくため、汚水管渠及びポンプ場遠方監視システムの長寿命化計画を策定し、計画的な改築及び修繕を進めます。

人口減少に伴い増加傾向にある空き家・空き地については、市が定める判断基準により、保安上危険となるおそれがある特定空家等への対応を4月から実施するとともに、本市独自の緊急安全措置の早期制度化に向けて準備を進めます。一方で、そうした空き家・空き地について、さまざまな分野で有効活用できるよう対策計画の策定に取り組みます。

平成28年度市政運営方針

「市民の防災意識の向上」「警察署と連携した各種防犯キャンペーン」に対応していますが、「警察や地域などと連携し、犯罪のないまち」に対応する内容が述べられていません。公約には記載がありませんので、これについては議会が代表質問で確認しなければならないでしょう。

3.協働によるまちづくりの推進

(略)

そのため、まず、総合計画に基づく実行計画や予算の検討段階における情報を公表し、市民や市民団体などとの情報の共有化を進めます。市長への提言として寄せられた市民からの意見や要望についても、その対応結果を月1回公表していきます。

平成28年度市政運営方針

ソフトバンク代表の孫正義氏が実施している「『やりましょう』進捗状況サイト[3]」のようなイメージを持てば良いのでしょうか。昔から「市長への提言」というページはあるのですが、回答は提言した本人しか知ることができなかったはずなので、その点が改善されるのでしょう。公約にあります。

●住民からの要望と市役所の対応の進捗状況をインターネットで公表します。

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受益者負担への理解は進むか

4.将来世代に大きな負担を残さない徹底した市政改革の推進

(略)

まず、新たな行政改革実施プランに基づき、自主財源の確保と受益者負担の適正化や、事務事業等の見直し・最適化、行政の役割と責任を踏まえた効率的・効果的な行政運営、スリムで機動力を持った組織体制の確立に向けた具体的な取り組みを着実に進めます。

(略)

国民健康保険特別会計の財政健全化に向けて、保険料の適正な賦課や医療費の適正化を図るとともに、収納対策の強化などを進めます。また、累積赤字については赤字解消計画を策定して、国保広域化に合わせ平成29年度末までの解消をめざします。

(略)

重点施策をスピード感を持って全庁横断的に推進するため、市政の総合調整部門に、市民・事業者との協働の推進、まちの魅力づくりや活性化及び市政改革を担うスタッフ職を配置します。また、市民にわかりやすい体制整備として、保育所・幼稚園・認定こども園の入所事務等の所管部署を一元化します。加えて、より戦略的な事業運営及び緊急時の対応を強化するため、上下水道局組織を経営部と事業部に再編します。

(略)

さらに、女性活躍推進法や次世代育成推進法に基づき策定した各行動計画に掲げる、女性職員の活躍やワーク・ライフ・バランスの取り組みを推し進めるとともに、メンタルヘルス対策の強化を図る観点から、ストレスチェック制度を導入するなど、職員の能力を引き出し、さらに伸ばしていくための職場環境づくりに取り組みます。また、私自身の倫理の保持に資する条例を制定します

平成28年度市政運営方針

「サービスを受ける人がお金を払う」という受益者負担の考え方について、議会で一部から反発があります。それを踏まえた上で伏見市長は「適正化」という言葉を使って理解を求めていく考えです。

国民健康保険料を滞納している人へは、今後、対処がより厳しくなるので、そういう人は注意が必要です。

保育所は厚生労働省、幼稚園は文部科学省が所管するという役所の勝手な都合で、組織をまとめることができないのが通説でしたが、時代の流れに合わせて、かなり思い切ったことをしようとしています。実現できれば高く評価されてよいことだと思います。

市長の倫理条例制定は公約でした。そもそも議員ら自身には関係のないことなので、サッと成立するでしょう。

●利害関係者による市長への寄付や供応を禁止する「倫理条例」を制定します。

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“とりあえず高卒”へ

3.一人ひとりの成長を支え、豊かな心を育みます

(略)

子どもやその家庭の多様化・複雑化する相談に総合的に対応するため、家庭児童相談やひとり親家庭等自立相談、子ども・若者のひきこもりなどの相談窓口を一元化し、臨床心理士や精神保健福祉士、保健師など、さまざまな専門相談員を配置する子ども総合相談センターを設置します。

子どもの将来が生まれ育った環境によって左右されることなく、貧困が世代を超えて連鎖しないよう、本市における子どもの貧困の実態や家庭の状況を把握するとともに、その対策として、将来の進路選択の拡大につながるよう、生活困窮家庭の中学生を対象にした学習支援事業を拡充し、高等学校等への進学を支援します。

ひとり親家庭の自立を支援するため、親と子どもの学び直しを支援する高等学校卒業程度認定試験の合格に向けた支援事業を実施します。

多子世帯等への経済的な負担軽減を図るため、国制度に基づき、保育所や幼稚園等における保育料の軽減策を実施します。

(略)

また、老朽化やバリアフリー対応等の課題を抱える香里ケ丘図書館については、周辺地域の発展につながるよう、再整備に向けた検討を進めます。

平成28年度市政運営方針

一元化された相談窓口が設置されたら、後はどれだけ広報で必要としている人にアプローチできるかの問題になるでしょう。

これらの事業による支援だけで解決するものではないと思いますが、枚方市民であれば経済的な理由で高卒(認定含む)を諦めずに済むというのは大きなウリになるでしょう。実現できれば少し光が射すかな?

多子世帯の保育料が大幅に値上げされた、豊中市での個別のケースが大きな反響を及ぼしていました。筆者が以前の記事において想像で述べたように、やはり国の制度の行方を注視しながら対応するそうです。「検討」ではなく「実施」と表現していますから、かなり意思は固いですよ。

美術館問題で持ち上がった香里ケ丘図書館の建て替えは、美術館の問題とは別個で対応していくようです。

“田舎”自虐の脱却へ

4 終わりに

(略)

また、そうした施策を効果的に情報発信するため、広報アドバイザーを設置し、さまざまな手法を用いて市内外の多くの人に本市の魅力を知ってもらうとともに、市民との協働によるまちづくりを進めていくことで、いわゆる「シビックプライド」を醸成していく考えです。

平成29年が市制施行70周年を迎える年となることから、市民をはじめ多くの人に本市の魅力を知っていただき、本市への愛着を大きく育む契機としていただけるよう、記念事業の準備を進めてまいります。

なお、公約に掲げた花火大会については、できる限り早期に開催できるよう、安全面や環境面などの課題整理を行うとともに、規模や実施場所、財源など具体化に向けた検討を行っていく考えです。

平成28年度市政運営方針

筆者は既に「シビックプライド」は醸成されていると考えます。枚方市民が口を開けば「40万都市なのに田舎」という自虐表現をするのは、愛着表現やプライドの裏返しと理解しています。枚方市民にプライドそのものは存在していて、腐っているだけではないでしょうか。「醸成する」というよりは「磨き直す」だと思います。

花火大会は「できる限り早期に」とは言いつつも、伏見市長が平成28年度中の開催を目指している雰囲気ではなさそうです。性急に実施せず、腰を据えてまず課題整理をしてから、市政施行70周年のタイミングに合わせて開催したい考えのような気がします。映画ロケでの混乱の様子を見ていると、個人的には2016年の復活は不安です。

[1] 3月定例月議会で伏見市長が平成28年度市政運営方針を表明しました - 枚方市ホームページ

[2] 小さなニュース 第5回小さなニュース 第6回で紹介しました。

[3] 孫正義 @masason 「やりましょう」進捗状況 | SoftBank

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