転出超過の原因は子育て環境の不十分さではない

【追記】タイトルを修正しました。

前回の分析結果から、枚方市で人口減少が起きている原因はアラサー(30歳前後の人たち)の転出にあることがわかりました。アラサーになると見切りをつけられてしまう以上、その要因を取り除かなければ、他の年齢層で埋めても意味がありません。流出したアラサーを取り戻していく必要があります。今回は、そのために何が必要なのかを探ります。

前回のおさらい

枚方市の人口減少問題について統計資料を分析し、政治家の見解を確認しました。

枚方のアラサーの実態

枚方を去る人v.s.住み続ける人

枚方市全体の傾向を把握できたので、今回は町名ごとの傾向を調べてみたかったのですが、そのものズバリがわかる統計資料が見当たりませんでした。ただ、人口減少は継続して起きていることは前回の分析でわかっていますので、30歳前後の人たちが比較的少ない地域を転出超過の地域とみなすことは、あまり問題にならないと解釈しました。

そこで、枚方市統計表の2015年10月のデータを使用して、まず人口が1000人以上の地域すべてについて、その地域全体における5歳階級別人口の比率を計算することにしました。その結果をグラフにしたものが図1です。

図1.枚方市の町名別人口比率

俯瞰して見ると、折れ線グラフの集中しているところがあります。これが枚方市を代表する年齢層ごとの分布です。この結果から、30〜34歳階級の平均値から最小値に向かって30%を超える群を抜き出すと、図2のようになりました。要するに枚方市内でも、とりわけ30〜34歳の人口が少ない地域を抜き出したグラフです。図1と図2を見比べると似通っていて、大きく違うところは見当たりません。

前回の分析で、枚方市の人口減少は30歳前後の転出超過にあると結論付けましたが、図1と似通っているということからしても、30歳前後の人口が少ない地域に人口流出が発生していて、そのことが枚方市全体の転出超過をもたらしていると言えそうです。

図2.30〜34歳人口比率の低い町

一方、30〜34歳階級の平均値から最大値に向かって30%を超える群を抜き出すと、図3のようになりました。さきほどと同様に、枚方市内でも、とりわけ30〜34歳の人口が多い地域を抜き出したものです。折れ線の形が図1や図2と似通っているとは言えません。枚方市全体の大きな流れとは異質で、ここにヒント(人口流出の発生しにくい要因)がありそうです。

図3.30〜34歳人口比率の高い町

住み続けてくれるアラサーの住む場所

では、図3の地域は具体的にどこなのでしょうか。表1のような結果になりました。読者のみなさんも、これらの地域を一つずつ地図で確認してみてください。ほどんどの地域において鉄道の最寄駅に近い特徴が見られましたので、最寄駅を併記しました。

表1.30〜34歳人口比率の高い地域
町名最寄駅
村野本町村野駅
宮之阪1丁目宮之阪駅
禁野本町2丁目枚方市駅
磯島南町枚方市駅
渚西1丁目御殿山駅
渚西2丁目御殿山駅
上野2丁目御殿山駅
牧野本町1丁目牧野駅
西牧野4丁目牧野駅
招提元町1丁目牧野駅
船橋本町2丁目樟葉駅
東船橋1丁目樟葉駅
町楠葉1丁目樟葉駅
町楠葉2丁目樟葉駅
南楠葉1丁目樟葉駅
南楠葉2丁目樟葉駅
大峰元町2丁目藤阪駅
杉山手3丁目長尾駅

住み続けてくれるファクターは?

厚生労働省が公表している2014年の平均初婚年齢は、夫31.1歳、妻29.4歳で、大阪府では、夫31.0歳、妻29.5歳でした。この数字から結婚と出産について図3の人口比率を読み取った場合、0〜4歳と5〜9歳、35〜40歳と40〜44歳で(ばらつきが大きいものの)高くなっています。

表1のほとんどの地域が鉄道の駅まで徒歩圏内、もしくは自転車や路線バスを利用したとしても5〜10分程度の圏内にあります。鉄道駅に近い地域で30歳前後の人口比率は高く、子どもの人口比率も高いとしたら、鉄道の駅に近いことが子育て環境の良さになってしまいます。小さな子どもを連れて公共交通機関を利用しにくいことを考えれば、辻褄が合いません。よって、これらは分けて検討すべきです。

つまり、枚方市外の都市部へ通勤するのに利便性の良い場所を選んでいるのです。そこから考えると、残りの鉄道の駅に近いとは言えない地域は近くに会社や工場があるので、たぶん枚方市内の会社や工場に勤めている人たちが住んでいるのでしょう。

鉄道の駅に近くない地域でアラサーの転出を食い止めるには、まずは市内での雇用をなんとかするしかありません。枚方市が実施している転出者へのアンケート結果にあるとおり、転出する理由で最も多い「仕事の都合」をなんとかしないと、転出超過は今後も続くのではないでしょうか。

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