小さなニュース 第26回

市長のビジョンは職員に伝わっていない

市長は機会をとらえて職員に講話を行い、想いを伝えているとの認識です。市長のスケジュールを見ているので、職員を対象にした講話が行われていることは承知しています。しかし、想いは伝わっているのだろうかとの疑問は解けないままです。

“協働”は口先だけ

伏見市長は「協働によるまちづくり」の一つとして市長への提言の公表頻度を月1回に変更しました。協働を目指すなら、回答から協働を促進していこうとする姿勢が感じられても良いはずです。しかし、筆者は幾度も指摘しているように、ありがたいものと受け止めている回答は少ない、実現できない理由しか述べられていないほか、提言者の言わんとする趣旨をとらえられていない回答も散見される状況が続いています。

市長がどんなビジョンを示しているのかは知りませんが、少なくとも表に示した回答からは協働を目指そうとしていると感じられませんでした。

表1.市長への提言と市の考え方(平成29年7月)
提言番号件名と要旨市の考え方筆者の指摘
1

陸上競技場の改修などスポーツへの取り組みについて

枚方市には立派な陸上競技場がありますが、ある事すら知らない人もいます。

全国大会が開けるくらいに改修し、学生達の憧れの地にできないものでしょうか。

陸上競技場は、北河内7市で唯一の日本陸上競技連盟公認陸上競技場で、現在多くの大会などを実施しております。サッカー・陸上競技などの小学生の大会や社会人の大会以外にも、各競技のトップアスリートを招いて市内小学生対象の体験教室なども行い、トップアスリートとの交流やスポーツを体験する機会を設けることができるよう考えております。また、陸上競技場を含めたスポーツ施設については、多様なニーズに対応できるよう計画的な改修を行うこととして、各施設の状況や課題について把握、検討することとしております。

なお、各種イベントについては、より多くの方に認識していただけるよう、広報紙や市ホームページなどで情報発信を行い周知に努めてまいります。

議論の開始点を手前へ下げてしまっている。

提言と市の考え方を総合すると、日頃の情報発信では一部の市民は伝わらないことが課題とわかる。つまり、この「知らない人がいる」という提言に対して「情報発信に努める」との回答は「何もしない」と等価である。

せっかくの提言を無駄にしないためには、どのように改善すれば陸上競技場が「学生達の憧れの地」に変えられるかについて、より市民の考えを知ろういう姿勢を見せなければならない。よって、市の考え方で示すべきは、情報発信の限界を認識していることの説明や、どのようにすれば効果的に存在を知ってもらえるかの提言への期待であろう。

2

駐車場の有料化について

議会を傍聴するだけで、1時間30分を超えることがあります。市民にとって議会の傍聴は貴重な機会です。時間を気にせず無料で駐車場を利用できるように配慮をお願いします。

議会の傍聴等を通じて、市民の方が市政に触れていただくことは大切であると認識しておりますが、市役所駐車場は駐車台数が限られており、これまで長時間の駐車による混雑など、様々な課題がありました。市役所駐車場の有料化につきましては、市役所に用務のない方の駐車を抑制し、市役所での用務終了後の速やかな出庫を促すことで、入庫待ち車両による交通渋滞の解消を図るとともに、公共交通機関等を利用して来庁される方との公平性の確保、あわせて、一定時間以上の駐車場利用について、利用する方にその受益に応じた負担をお願いするなど、これまでの駐車場運営における問題解決を図っているものです。

つきましては、市役所駐車場のご利用にかかる全時間を無料にすることは難しいと考えております。

なるべく公共交通機関を利用するよう勧めていない。議会や審議会などの傍聴を「用務」と位置づけるかどうかの明言を避けている。

2015(平成27)年11月に市が示した「来庁者・利用者用駐車場の有料化に関する考え方」では、議会や審議会などの傍聴を有料化の対象とするかどうかを明示しなかった。

3

枚方市立体育館の利用について

枚方市立体育館を利用していますが、団体利用のための登録が、不正に行われているように思います。

団体登録につきましては、枚方市立総合スポーツセンター条例、同施行規則等に基づき、受け付けています。専用使用方法に関して、今後、団体登録構成員による適正な使用が行われるよう、必要に応じて指導してまいります。また、構成員の入れ替わりにより、構成員が全て同じである団体、あるいは構成員のほとんどが同じである団体と判明した場合には、速やかに当該団体登録の取り消し手続きを行ってまいります。

公共施設は民間のスポーツ施設とは少しばかり性質が異なるはず。市民の共有財産として、少ない資源を互いに譲り合って利用してもらえるように働きかけることこそが職員の仕事ではないだろうか。

ルールの抜け穴を見つけて利用する人のために、新たにルールを追加したり変更したりするのでは、いたちごっこになることは想像に難くなく、職員も内心では感じているはず。

抜け穴だらけのルールであっても、すべての市民が良心的に、気持ち良く施設を利用できる環境にしていくことが、市長が描く「協働によるまちづくり」ではないかと考える。

5

雨天時のかさの取扱いについて

雨天で来庁した際、出勤してきた職員が傘袋を利用せず、落ちた水滴がたまり清掃業者の方が気の毒に感じました。

職員の登庁時間においては、特に別館北側玄関を通る人数が多く、雨天時は傘の水滴等が落ちてしまいますが、職員分の傘袋を全て用意することは困難です。

そのため、雨天時には床に水が溜まらないよう清掃業者に対応をお願いしております。

「気の毒」に対する回答がないほか、職員向けの傘袋を用意できないとする回答も提言者の求めた回答ではないだろう。

提言者を安心させるには、「清掃業務の委託の仕様書には、職員向けの傘袋の用意がないことを明記し、雨天時には床面の水滴を拭き取るよう記載しており、業者はそれらを踏まえて受注されている」といった回答がふさわしい。

大雨による被害はあった

2017年8月18日は梅雨前線に南側から暖かく湿った空気の影響を受け、枚方市は明け方から朝にかけて雷雨でした。気象庁の観測では枚方市は午前4時40分ごろから午前8時20分ごろにかけて47ミリの雨が降りました。

図1.平成29年8月15日午前6時の天気図

実際には雨の量はもっと多く、枚方市内では50〜60ミリ程度の総降水量を観測したところもあります。

18日午前4時から10時までの総降水量は、多いところで
上野66.5ミリ▽氷室台64ミリ▽津田北町2丁目62.5ミリ▽長尾元町61.5ミリ▽田口61ミリ▽津田南町56ミリ▽新町55ミリ▽池之宮52ミリ▽大垣内町と北山51ミリ
でした。

— 枚方市政を追いかける!(仮) (@hirakatawatch) 2017年8月18日

被災情報の公表の非積極性と高まらない市政への関心

市は現在までのところ、この大雨に関する公式発表をしていませんが、議員には被害状況を報告しています。

本日9時34分に大雨洪水警報が解除された一方で被害についての報告も入ってまいりました、、、落雷火災、倒木、道路冠水、道路陥没、停電等爪跡の大きさを伺わせる内容となっております。

「爪跡」の大きさ。,枚方市議会議員 田口よしのり議員報告ブログ(2017年8月18日)

市は人口減少による税収の減少によって、将来、多額の費用を要する施設や設備の維持が難しくなるとの試算を公表しています。古くなった下水道を新しくすることが難しくなれば、このように大雨をきっかけに道路が陥没するという被害も増えるかもしれません。

先週金曜日の早朝、枚方市域が豪雨にみまわれ、停電をはじめ道路冠水などの災害が発生しました。津田元町3丁目では、雨水管の劣化により道路が陥没。配管の更新には時間がかかりますが、取り急ぎ道路の復旧工事をしました。

道路陥没の復旧,藤田幸久(2017年8月21日)

この情報は「オープンひらかた」に掲載されている予算や部の運営方針、審議会の情報と比べて、どちらがより多くの市民にとって市政に関心を持ちやすいでしょうか。

債権回収条例制定へ

平成29年9月定例月議会に「枚方市債権管理及び回収に関する条例」案が提出され、可決、成立するものとみられます。

市は2017年7月25日に開催された戦略会議で議論された内容を2017年8月24日に公表しました。

1.9月定例月議会の提出予定議案及び委員協議会案件について

・未収金対策の強化について、総務委員協議会案件及び建設環境委員協議会案件としてあがっており、議案としても双方からあがっているが、双方から提出する必要があるか。枚方市債権管理及び回収に関する条例の附則で対応してはどうか。

→担当各課に確認のうえ、調整する。

(附則で対応するため、総務委員協議会案件のみとし、議案は財務部より提出する。)

戦略会議に係る情報,枚方市(2017年7月25日)

この戦略会議で議論された通り、条例案は総務委員協議会の案件「8.未収金対策の強化について」として取り扱われたようです。

総務委員協議会 第1委員会室
(続き)⑥公共施設マネジメント推進計画に係る施設評価等について⑦工事請負契約締結状況報告(平成29年4月~6月)について⑧未収金対策の強化について

— 枚方市政を追いかける!(仮) (@hirakatawatch) 2017年8月23日

戦略会議での議論の要旨を公表するタイミングが遅いわけですが、ちょうど1か月という間を取って公表していることから、恣意的にタイミングを合わせているように思います。

舞鶴市は優しいのに…と反発する共産

条例制定の動きに反応した日本共産党議員団は、京都府舞鶴市を視察したようです。そこでの感想を松岡議員がブログに掲載しました。

…(略)…党議員団で舞鶴市の債権管理について視察におじゃましました。枚方市は、9月議会で債権管理のための条例案を提案する予定です。党議員団として、市民目線の債権管理とは?をこの間調査をしてきました。…(略)…枚方市と大きく条件が異なったのは、2010年から京都府内で地方税等については共同の徴収組織「地方税機構」にて徴収業務が実施されているという点です。…(略)…正義と思いやりの債権管理とされとる・きる・つなぐと取り組まれています。…(略)…ちなみに枚方市の債権管理の部署にはタイヤロックの見本が示されていて「ちゃんと納税しなかったら、こんなことになるんだよ」とプレッシャー・・・脅し・・・・で納付を迫るというスタイルです。(税ですが)舞鶴市では、市民が債権管理課に、来ても「相談」となるので、写真のようにまるでどこかの銀行のようなやさし気な相談コーナーが設置されています。…(略)…滞納が国保だけではなく多岐に渡ってしまっているケースも見られることでトータル的な支援につなげていくことができるからだということです。色々と話を聞かせてもらったりしてみて、生活支援相談センターにつないだ方が良いと判断されれば、生活支援相談センターにつないで、またこの場所で「生活保護が適切だ」ということになれば生活保護受給へとつながっていくんだそうです。…(略)…まれに「窓口の職員から生活保護受給されたらどうですか」と言われた・・と私たちのところに来られる市民の方もおられますが、職員が寄り添って必要な市民には、課をまたいででも、生活保護の手続きまで支えていくということに、驚きでした。職員の配置も「直営でしっかりと職員を配置してもらっている」といわれました。何故ここまで?と不思議でしたが、市長の方針なんだそうです。市長の姿勢でこんな風に職員が働くことができるんですよね!うらやましい~ちなみに、思いやりで債権管理をとりくんでも、未納金額は3割削減、収納率も向上しているということです。

正義と思いやりの舞鶴市,松岡ちひろの明日があるさ(2017年8月8日)

同じ会派の野口議員は「驚きです」と言うのが口癖で、何に驚いたのかよく分からないことがほとんどですが、松岡議員にその口癖が伝染したようです。タイヤロックを展示して、毅然とした対応をしている枚方市と、相談コーナーの雰囲気や生活保護の受給を職員が勧める対応をした舞鶴市を対比しています。松岡議員は枚方市の対応が「正義」ではないとして、いかに厳しく市民に対応しているか、さらに強化しようとしているのかを訴えたいのでしょう。この文章から、日本共産党議員団は議会に提出される債権回収条例案に反対するものと考えられます。

余談ですが、この舞鶴市長は選挙で共産党の支援を受けずに当選しています。共産党の推した別の候補者は落選したので、少し不思議な行動だなと感じています。

さて、実際のところ枚方市はどのような対応をしているのかというと、よくわかる資料が見つかりました。2017年2月2日に開催された枚方市国民健康保険運営協議会での議論を確認してみます。

◯委員 P12の保険料収納率の推移について、平成24年度から平成27年度まで、あまり変化が見られませんが、徴収に対しての努力を教えてください。

◯健康部次長 収納率の向上には、地道な努力が必要となります。一番大切なのは、自主納付をして頂く方の意識です。その意識を高めていくために、様々な啓発活動を行っています。支払方法別では、口座振替が一番収納率が高いため、口座振替を増やしていくよう努めています。また最近始めたのは、被保険者の新規加入の手続きの際に、国民健康保険の説明をしていますが、その際に、無断で滞納をした場合には、厳しい差し押さえ等の処分に繋がることへの説明を行ったり、タイヤロックの差し押さえの現場写真を窓口に貼るなど、様々な努力をしています。滞納整理においては、納付義務者の人たちが、滞納に落ちていかない努力と滞納に落ちてしまった人から如何に回収していくかという二つの側面から並行して取り組んでいます。滞納者10人に面談を行うと、決まって10人とも苦しくて払えないと言われます。それが本当であるかどうか、客観的に判断するために財産調査を行いますが、中には滞納額数十万円の方が預金の調査を行うと数百万円規模の預金や1千万円を超える預金が見つかることもあります。きちんと調査をして、財産が見つかれば滞納処分ということになります。ただ滞納処分だけで、収納率は上がりませんので、今後とも滞納すると厳しい処分になることを、PRしていきたい。

◯委員 少しは改善されると思ったら、毎年同じで改善されていないのが気になりますね。

◯健康部次長 今年から始めたことでは、債権回収課により滞納者の自家用車を差し押さえ、国保としては初めてのインターネット公売で新年度早々に売却を試みます。また、税金と国民健康保険料両方に滞納があって、預貯金や生命保険等を調べても見つからない滞納者に対して、税と合同で家宅捜索を実施するなどの取り組みを行っています。現年度収納率が上がるのは少し時間が掛かりますが、今年からは、新しいことにどんどん取り組んでいます。滞納繰越分については、取り組めば取り組むほどダイレクトに収納率に繋がります。滞納すると厳しい処分になるということを、今後もPRして、自主納付に繋げていきます。

平成28年度 第2回枚方市国民健康保険運営協議会 会議録(2017年2月2日)

数百万円〜1千万円を超える預金があるのに「苦しくて払えない」という人がいるそうです。そんな人に優しく対応したり、生活保護の受給を勧めたりしてはいけません。市は、一口に滞納と言っても「無断」で滞納するのと、払えないと申告するのとでは、滞納する人の意識に違いがあると見ているのです。

舞鶴市民と枚方市民の意識の違いを、舞鶴市と枚方市の行政対応の違いだと松岡議員は誤解しているように思います。「枚方を変える」ならば、枚方市民の意識も変わらなければならないでしょう。

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