枚方市の認知症の人は、今後どれだけ増えるか

先日、NHKがこんな番組を放送していました[1]

【日曜夜9時】#認知症社会 って何?どんなことが起こるの?解説その① https://t.co/3TYiEsIViw pic.twitter.com/2ZQAbaU97H

— Nスペ【私たちのこれから】 (@nhk_ourfuture) 2017年3月23日

【日曜夜9時】#認知症社会 って何?どんなことが起こるの?解説その② https://t.co/3TYiEsIViw pic.twitter.com/TN6g3ye0js

— Nスペ【私たちのこれから】 (@nhk_ourfuture) 2017年3月23日

【日曜夜9時】#認知症社会 って何?どんなことが起こるの?解説その③ https://t.co/3TYiEsIViw pic.twitter.com/5ryEdibyNQ

— Nスペ【私たちのこれから】 (@nhk_ourfuture) 2017年3月23日

急激に増加している認知症の人口を、2025年には「高齢者の5人に1人が認知症」と表現し、視聴者に危機感を持たせようと企図された番組でした。NHKだけでなく、国も2025年には「高齢者の5人に1人が認知症」という見解です。

枚方市は高齢者の転入超過、人口規模が維持できない程度の出生率の横ばい傾向に加え、若者の人口流出といった状況にあり、今後の枚方市の行方がとても気になりました。

将来推計をしてみた

そこで、筆者は番組が紹介していた認知症有病者数、有病率の将来推計を求めるために引用していた論文を探し、枚方市ではどのように推移していくのかを調べることにしました。ちょうど、筆者がコーホート変化率法による最新の枚方市の将来人口を推計していた[2]ため、その結果を使っています。

NHKの番組内で推計に用いられていた論文[3]は、糖尿病と認知症の関係から認知症有病者数を推計する数学モデルを作り、その数学モデルを検証するという内容です。この数学モデルを枚方市の将来推計人口に当てはめて、枚方市の認知症患者数の将来推計を求めました。

結果

枚方市における認知症有病者数の将来推計は次のとおりです。

枚方市における認知症有病患者数の将来推計
図1.枚方市における認知症有病患者数の将来推計

枚方市の認知症患者数は2040年ごろにピークを迎え、有病者数は約8500人、高齢者の13人に1人に相当します。

考察

このように、2060年までに枚方市の認知症有病者数が1万人を超えることはありませんでした。将来推計では、2050年代半ばまでは高齢者人口の7.5パーセントを上回りません。

枚方市における認知症有病率の将来推計
図2.枚方市における認知症有病率の将来推計

また、この結果を枚方市全体の人口に対する認知症有病者数の割合として見た場合、割合は2050年までに現在の約3倍程度まで増えることがわかります。認知症有病者数が2040年ごろから減少するのに、枚方市全体の人口に対する認知症有病者の割合が上昇するのはなぜか。これは他の年齢層の人口が減少するからです。

枚方市人口に対する認知症有病者の割合の将来推計
図3.枚方市人口に対する認知症有病者の割合の将来推計

よって当面は、2040年ごろまで増加しつづける認知症有病者への対策が求められるでしょう。ただし、その後は約1300人の減少が見込まれますが、支えられる人が少なくなるので、財政面などの工夫をしておく必要があるでしょう。

番組が伝えていた内容に揃えると、2025年の枚方市の認知症有病者数は約6300人です。これは高齢者の5.6パーセント、18人に1人に相当します。今回の推計に参照した論文は、糖尿病有病率が一定で推移する「控えめな」推計として考察されていて、2060年には糖尿病有病者が2割増加すると仮定した場合の推計も行われています。しかし、それを筆者の推計に適用しても、1万人を超えませんでした。

感想

結果を見て認知症有病率の低さに驚きました。

これを仮に2025年の「高齢者の5人に1人」として、枚方市の将来推計人口に当てはめると約2万2000人ですから、約3.5倍も多くなってしまいます。枚方市だけで検討すると、話を盛りすぎていると言わざるを得ません。

補足

この数学モデルは前述のとおり、糖尿病の有病率を必要とします。

枚方市が健康増進事業として実施している健康診断のデータ[4]を参照したところ、受診者数が枚方市の人口規模に比べて少なく(受診者数が100人規模)、このデータを用いて認知症有病者数を推計しても結果の信頼性を損なうかもしれないと考えました。

そこで、別の統計がないか調べていたところ、大阪府の糖尿病総患者数[5]を見つけました。ここから患者数を性別と各年齢階級について2015年1月の住民基本台帳人口であんぶんしたものを枚方市内の糖尿病患者数とみなして認知症有病者数を推計しました。

とは言うものの、両者の結果には大きな差が認められませんでした。この記事では患者調査のデータを使用しています。

[1] 【NHKスペシャル】 私たちのこれから Our Future|NHK(NHK総合テレビ、2017年3月26日午後9時放送)

[2] 筆者は、昔に市が公表した将来推計と実際の人口がかけ離れていることに気づき、推計していました。

[3] 日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究,二宮利治,九州大学,2015年3月

[4] 平成27年度地域保健・健康増進事業報告,厚生労働省

[5] 平成26年患者調査,厚生労働省

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