政務活動費の払い方と返還率

急遽、予定していた内容を変更してお伝えします。

地方議会の事務局にアンケート

朝日新聞が全国の自治体のうち、都道府県、県庁所在地の市、政令指定市、中核市、東京23区の合わせて148の議会事務を担当する部署にアンケートを送付し、その結果を記事に掲載しました。この記事に関して、枚方市議会議員は誰もコメントしていないようです。

政活費前払い、世間の常識とズレ 議員「立て替え無理」 https://t.co/LiOqncF9iq

— 朝日新聞(asahi shimbun) (@asahi) 2016年11月17日

記事には根本的な問題があるように思います(後述)が、朝日新聞は定義した「返還率」の高い5自治体と低い5自治体を図で掲載しています。

政務活動費を受け取る手続き

まず議論の前に、政務活動費の基本的なことを理解しておく必要があります。枚方市の場合、政務活動費は議員1人につき月額7万円を上限として、基本的には単年度分(4月〜翌年3月)を一括して市長に申請し、交付を受けます。そして実際に使った額を収支報告書として議長に提出しなければなりません。もし、お金が余ったら返さなければなりません。

返還率全国トップとの違いは?

この記事に関するツイッターのタイムラインを眺めていると、次のような感想を述べられた人がいらっしゃいます。この人が徳島市について言及されている理由は、返還率が全国で最も高い議会だとして、記事に掲載されているからでしょう。

条例調べたら他の自治体と文面は変わらなそうなのに、徳島は政務活動費の返還率なんでこんなに高いんだろ。https://t.co/VzBWFfE3Gh

— かねごん@Loquiあと11日 (@fiteeehawk9) 2016年11月16日

ふと気になったので徳島市議会と枚方市議会の条例等を比較してみると、余ったお金(残余)の返還に違いを見つけました。この違いが返還率に影響したと考えることはできます。

返さないと支給しない&取り立てる徳島市議会

徳島市議会では、前年度までの余ったお金を返さないまま交付申請すると、その分を減額されて支給されるうえ、余ったお金を返しなさいと言われます。しかも議員の「相続人」にまで触れられていて、逃げにくくしています。

(政務活動費の返還)

第9条 市長は,議員が各交付対象期間に交付を受けた政務活動費の額から別表に定める政務活動に要する経費として当該各交付対象期間の初日から末日までの間に支出した総額を控除して残余があると認める場合は,当該残余の額に相当する額の政務活動費の交付決定を取り消し,当該議員(議員であった者及びその相続人を含む。)に対し,その返還を命じなければならない。

徳島市議会政務活動費の交付に関する条例

ちなみに余ったお金の返還期限は定められていませんでした。

返さなくても支給される&取り立ては市長任せの枚方市議会

一方、枚方市議会では返還期限を過ぎているのに返さなくても、徳島市のように減額されることはありません。

(政務活動費の残余額の返還)

第9条 政務活動費の交付を受けた議員は、交付を受けた政務活動費に残余が生じたときは、当該残余の額に相当する額を市長に返還しなければならない。政務活動費の交付を受けた議員が議員でなくなった場合においても、同様とする。

枚方市議会議員に対する政務活動費の交付に関する条例

余ったら期限までに返さないとダメです。余ったお金を返すのは「収支報告書の提出期限の翌月末」までと定めています。

(政務活動費の返還期限)

第6条 条例第5条及び条例第9条の規定に基づく政務活動費の返還は、条例第7条第1項に規定する収支報告書(以下「収支報告書」という。)の提出期限の属する月の翌月の末日までに行わなければならない。

枚方市議会議員に対する政務活動費の交付に関する条例施行規則

たとえ、余ったお金を返さないまま議員の身分でなくなっても、枚方市議会では「相続人に取り立てる」とまで定められていません。そのときの市長の裁量の範囲なので、いかようにもできますね(取り立てないこともできます)。

(議員でなくなった場合における政務活動費の返還)

第5条 政務活動費の交付を受けた議員は、議員でなくなった場合は、当該議員でなくなった日の属する月後に係る月分(その日が月の初日に当たる場合にあっては、その日の属する月以後に係る月分)の政務活動費を市長に返還しなければならない。

枚方市議会議員に対する政務活動費の交付に関する条例

“返還率”って何のこと?

さて、2015(平成27)年度の政務活動費について、筆者は次のツイートをしていました。

【政務活動費の支給方法と返還率(2015年度)】
朝日新聞のアンケートに枚方市議会事務局が▽支給方法は前払い▽返還率は16.89%と回答しています。 https://t.co/mCTxEkIpjU
「返還率」の定義と計算結果に疑問。

— 枚方市政を追いかける!(仮) (@hirakatawatch) 2016年11月17日

提出された報告書は30人/32名。残額ゼロが11人(=使い切り)で、19人が返還しないといけない。よって返還済み議員の人数を求める計算式は「19×0.1689≒3」だと思って検算したら「3÷19≒0.1579」で合いません。なんで?

— 枚方市政を追いかける!(仮) (@hirakatawatch) 2016年11月17日

もしかすると、この返還率は2015年度の政務活動費だけではないかもしれません。それ以前に支給された政務活動費を含めて、返還していないのでしょうか。そこで、制度が始まって以降の余ったお金が余ったのに返さない議員の累積数として考えられる組み合わせの全てから、返還率が16.89%になる組み合わせを洗い出してみることにしました。

まず、この制度が始まってどれくらい経過しているのかを調べました。「枚方市議会議員に対する政務活動費の交付に関する条例」と「枚方市議会議員に対する政務活動費の交付に関する条例施行規則」が成立したのは2001(平成13)年3月31日ですから、今年で政務活動費の支給制度が始まって16年目だとわかります。

次に、議員定数から累積の議員数を求めます。議員定数は2007(平成19)年4月の選挙から34名、それまでは36名で、2015(平成27)年4月の選挙から現在まで32名です。よって制度が始まってから2015年度までの累計の議員数は520名です。ここから、残余を報告した累積のが520人を上回らず、返還率が16.89%となる組み合わせのすべてを調べた結果が次の表です。

表.枚方市議会の政務活動費の返還率が16.89%に合致する残余の報告件数・返還済・未返還の累積議員数として考えられるすべての組み合わせ(単位:件)
残余あり返還済未返還
14825123
21937182
22538187
29650246
30251251
36762305
37363310
37964315
43874364
44475369
45076374
45677379
51587428

朝日新聞のいう「返還率」の定義と筆者の想像に相違なければ、上記13パターンのどれかに当てはまるでしょう。返還期限を過ぎても返されず、同一人物が複数年度に渡って返還していないと、こんな数字にはなりません。世論は支給の是非、額、タイミング(前払い、会派から後払い、後払い)に関心があるようですが、それよりも使途や残余の返還期限を遵守していないことに気づいたほうが良さそうですよ。

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