2016年11月4日、枚方市は「重点施策・事業の進捗状況」を公表しました。
「リクエストすればPDF形式に変換する前のデータを提供する」という心配り以前に、やらなければならないことがあると思いませんか?内容に公正性がありません。誰かが各人に文章を書かせて、それらを1つのファイルに集めて、体裁を整えただけという、あまりにお粗末な仕事っぷりはいただけません。
公表資料について市は冒頭で次のように説明しています。
枚方市では、選択と集中を実現する行政経営システムを構築しています。このシステムは、市のまちづくりの方針決定を行う、「施策における選択と集中」とそれを受けて各部が取り組む重点施策や課題を示した「各部における選択と集中」から成り立っています。
平成28年度 部の運営方針 重点施策・事業の進捗状況,枚方市(2016年10月)資料では、重きを置いている事業や施策の進み具合を説明しています。市民に「選択と集中」の機能がきちんと働いているか、「選択と集中」は適切かどうかを確認してもらいたいわけではなく、今年度中に実施する取り組みの進み具合を知らせています。
まず、この資料には進捗の全体を見渡せるもの(表1)が示されていない問題があります。139の施策と事業の個別の進捗を報告しておきながら、全体を見渡せるものを文書に掲載しないのは不自然です。
進捗 | 施策・事業の数 | 割合 |
---|---|---|
完了 | 6 | 5% |
進行中(予定通り) | 125 | 89% |
進行中(遅れている) | 8 | 6% |
次に、進捗の状況を判断する要素が曖昧です。例えば「予算編成過程等の公表」は「完了(◎)」と記載されていて、この点は理解できますが、少なくとも今年度は継続して取り組まれるはずの「『市長への提言』の公表」が「当初の予定通り進行中(○)」ではなく「完了(◎)」と記載されています。◎,○,△の3種に収めこむには無理があります。
こういうノリで進捗を報告してよいなら「完了(◎)」でよいのに、なぜか「当初の予定通り進行中(○)」になっているのが以下の施策と事業です。このほかを含めて、筆者が精査した全体の進捗状況は表2にまとめました。
簡単に年度途中で完了できる施策と、他方でどんなに職員が努力しても年度途中で完了しない施策や事業が混在しています。もし、それがなんらかの評価につながるのであれば分けて考える必要があるでしょう。そうでなければ、たとえ職員の給与にメリハリをつけても、不公平な条件下ではモチベーションが上がりません。そういう観点から、施策と事業の進捗状況を3つに分類したこの中間報告は、今後、改善されるべきだと思います。
内部で目を光らせている人がおらず、行政改革は有名無実でやる気がないのがよくわかりました。
以下の内容から「当初の予定通り進行中(○)」としていることには、まったく理解できません。
平成28年度の取り組み | 進捗状況(平成28年9月末現在) |
---|---|
小学校6校、中学校3校について各1系列のトイレ改造工事を行います。 | 小学校3校、中学校3校について各1系列のトイレ改造工事を9月末に完了した。 なお、平成28年度に実施予定で未実施の小学校3校については、平成29年度に実施する。 |
遅れているのですから「進行中であるが遅れあり(△)」だと思ったのですが、百歩譲って平成29年度に持ち越したのなら今年度分は「完了(◎)」かと思いきや、今年度中に遅れを取り戻すつもりがないのに「当初の予定通り進行中(○)」としています。これはおかしい。
誰も読まないので、たぶん気づく人はいないと思いますが、読んだ市民は市を信頼しなくなるでしょう。懲戒処分級。
遅れている8事業(△)の状況を確認してみました。筋の通らない説明が散見されます。
遅れているクセに、その原因や理由を説明していません。
平成28年度の取り組み | 進捗状況(平成28年9月末現在) |
---|---|
校区コミュニティ協議会への補助制度については、現行制度の課題を整理し、より地域の自主性が高められるよう制度の再構築を行います。 | 地域の自主性が高められる補助制度の構築に向け、校区コミュニティ協議会との協働のあり方や現行制度の課題等の整理を行っている。 |
平成28年度中に再構築が予定どおり完了できないと見込んでいる要因が記載されていなければおかしい。
基本設計は3ヶ月遅れる見込みを示しています。
平成28年度の取り組み | 進捗状況(平成28年9月末現在) |
---|---|
設計業務について、平成28年9月を目途に基本設計をまとめ、実施設計を進めます。 また、総合文化施設の事業用地の買い戻しを行うとともに、施設運営の方針となる「施設運営計画」を策定します。 | 市民等の意見内容の反映や歩行者デッキの地権者協議などで進捗が遅れているが、平成32年度の開館をめざし、平成29年1月を目途に基本設計をまとめる。事業用地の買戻しと「施設運営計画」の策定は予定どおり進める。 |
美術館問題で市がアドリブのような提案を寄付者にしたために、開館予定がさらに1年遅れて、2020(平成32)年度とせざるを得なかったことに触れられていません。議会の会議録に残っているからといって、公表資料に掲載しなくても良い理由はないと思います。
国の制度を頼ってもなお財源が確保できず、第2子以降の無料化は実施できていません。
平成28年度の取り組み | 進捗状況(平成28年9月末現在) |
---|---|
病児保育の充実を図るとともに、保育所等の保育料については、国の制度(所得制限あり)に基づき年齢制限を撤廃し、第2子の保育料半額、第3子以降の保育料無料化を実施します。さらに、第2子以降の保育料無料化については、公立保育所の民営化なども含めた行政改革を推し進めることにより実現をめざします。 | 病児保育の充実としては、市立ひらかた病院内で市が運営している「枚方市病児保育室」の利用者増加に向け、紹介状の費用負担のあり方や、利用手続きの簡素化など、利用しやすいよう改善策の検討を進めている。 国の制度に基づく保育所等の保育料軽減措置については、条例改正等の手続きを経て、平成28年4月分に遡及して実施した。第2子以降の保育料無料化については、財源確保の状況を含め検討を進めている。 |
一部の契約が締結できていない原因は入札の不調でしょうか。魅力のないまちの特徴と言えるでしょう。
平成28年度の取り組み | 進捗状況(平成28年9月末現在) |
---|---|
淀川衛生工場の施設の老朽化や公共下水道の普及に伴うし尿等の処理量の減少に対応し、効率的・効果的な処理を行うため、平成29年度にし尿等の希釈放流を開始します。 し尿等の希釈放流の開始に向けた施設の改造工事を行うとともに、業務棟の解体工事等を行い、業務の集約に向けた取り組みを進めます。 | 淀川衛生工場改造工事は、一部契約締結に至っていない案件があるが、契約締結に向け手続きを進めている。一方、業務棟の解体工事等については計画どおり施工している。 |
過不足があります。進捗状況で平成28年度の取り組みではない「病床利用率8割の達成」に言及(=「過」)しています。今年度の取り組みの「女性の受け入れ対象患者の拡大」は進捗状況で説明されていません(=「不足」)。
平成28年度の取り組み | 進捗状況(平成28年9月末現在) |
---|---|
病床利用率向上のため、地域医療連携をより一層強化するとともに、病床利用率が低い4階東病棟(女性病棟)の受入れ対象患者の拡大を図ります。また、今年度に更新時期を迎える委託業務の仕様を見直し、費用縮減を図ります。 | 病床利用率80%は達成できていないが、診療単価の向上や外来患者数の増加により収益は拡大できている。 各種委託業務については、契約更新時に仕様の見直しを行い費用の縮減を図っていく。 |
会員数を増やす取り組みを実施することが平成28年度の目標であれば、「完了(◎)」で報告できたでしょう。「進行中であるが遅れあり(△)」と報告するのは、おそらく会員数が伸び悩んでいないものと思われます。最初に数値目標(例えば、会員数)を設定しなかったのでしょうか。
平成28年度の取り組み | 進捗状況(平成28年9月末現在) |
---|---|
「ひらかた地域医療連携ネットワーク協議会」に参画する枚方市医師会、枚方市病院協会及び枚方市歯科医師会などを通して地域の医療機関への説明を行い、開示施設会員数や参照施設会員数の増加を図ります。 また、「地域医療連携システム」に対する理解を深めてもらうため、広報ひらかたやホームページを活用して、医療機関や市民への周知を図ります。 | 枚方市医師会、枚方市病院協会及び枚方市歯科医師会などを通して「ひらかた地域医療連携ネットワーク協議会」の会員数を増加させる取り組みを今後も継続的に行っていく。 |
こちらも遅れているクセに、その原因や理由を説明していません。文章の問題だけなのかもしれませんが、こういう報告の内容であれば、行き当たりばったりで取り組みを進めていると言わざるを得ず、厳しい目が向けられなければなりません。お金のかかる工事に行政改革の考え方が不在。
平成28年度の取り組み | 進捗状況(平成28年9月末現在) |
---|---|
9月に収蔵庫解体工事の契約を締結し、10月・11月に解体工事を実施予定。12月には寺域北側の開放及び西面回廊の整備工事着手の予定。 築地塀の設計は、塀基底部の幅の検討に時間を要し遅れている。 |
取り組みが遅れたのは国のせいだとしています。
平成28年度の取り組み | 進捗状況(平成28年9月末現在) |
---|---|
農地台帳管理システム(農地の所有者、所在、地番、面積等の農地情報のデータベースを管理)の精度向上を図るとともに、国において運用開始予定の農地情報公開システム・フェーズ2(農地台帳及び農地地図の情報を一つのデータベースで管理)の把握・活用の検討を行います。 | 農地情報公開システムの把握・活用のため、農地台帳管理システムの精度向上を図った。また、国の運用開始予定のシステムが当初、6月頃であったが、震災の関係で予算の確保が遅れているため、国の動向等を注視している。 |
以上の内容を踏まえて進捗状況を筆者が精査したところ、全体の進捗状況は表2のように変わりました。括弧内は精査による変動した施策・事業数です。
進捗 | 施策・事業の数 | 割合 |
---|---|---|
完了 | 22(+16) | 16% |
進行中(予定通り) | 108(-17) | 78% |
進行中(遅れている) | 9(+1) | 6% |
進捗の状況を確認する以前に重大な問題があったとさ。