“オープンひらかた”開始約3ヶ月で市民が共有できたこと

市長が「協働によるまちづくり」を進めるためとして行われているのが「オープンひらかた」です。根本的なツッコミどころがたくさん露呈するのは良いことだと捉えておきましょうか…。

市長への提言

市長への提言は、公表される頻度を1ヶ月に高めたこともあって、年1回の頃より件数は増えています。個々の提言内容への回答については、すでに筆者が述べている通りです。特に、水道料金への提言(平成28年6月提言番号4[1])は、審議会に諮問するきっかけになったものとみられ、「市民との協働によるまちづくり」の成果として期待できそうです。

[1] 公表資料に「提言番号」の記載はありません。筆者は議論のために通し番号をつける必要性があると考えて、勝手に呼称しています。

実行計画

前回の記事で述べた通りです。見た目が堅苦しいために、読む人は限りなく少ないと思いますが、作成に時間のかかるのに、(無意味とまでは言い切れませんが)ほぼ無駄なことをしています。

特別顧問

市長は議員からの要望を受けているせいか、特別顧問に対して職務に従事させたのは2016年4月20日が最後のようです。

表.特別顧問が従事した時間
日付従事した時間
2016年1月6日3時間15分
2016年2月8日2時間30分
2016年2月16日3時間15分
2016年2月23日2時間30分
2016年3月30日2時間25分
2016年4月13日1時間30分
2016年4月20日3時間

報酬はプレスリリースに掲載された次の一文しか、わかるものがありません。

…(略)…報酬は勤務時間に応じた額とし、1時間以下の10,000円から5時間超の55,000円までの範囲内で支給する。

特別顧問を設置 改革のスペシャリスト上山信一氏を選任,枚方市(2015年11月30日)

交通費を除くと、特別顧問に7回分で21万円程度を支払っているものと考えられます。公表された「主な意見」に書かれている内容が具体的ではない点には理解しますが、平成27年度中に特別顧問が提言していたことが、平成28年度以降の取り組みとして、どのように反映されているかという部分が全く市民に見えません。

市民から徴収した税金の(仮に)21万円がドブに捨てられるくらい、予算規模と相対比較すれば大した額ではありませんが、実現可能な提言、現実的な提言、枚方の魅力の高まりそうな提言が見当たらず、何かの「スペシャリスト」なのかもしれませんが、「枚方を変える」には力不足なので人選を再考したほうが良いように思います。

広報アドバイザー

Facebookユーザーへのアプローチは適切か?

広報アドバイザーは、Facebookユーザーの関心を集めるようアドバイスしています。

1.公式フェイスブックの「いいね!」数を増やす方法について

「いいね!」数(閲覧登録者数)を増やすために、著名人(影響力のある人)や広報紙の取材相手に登録を呼び掛けてはどうか。母親向けの子育て情報など、フェイスブックをよく見る層を意識した内容にしてみてはどうか。

枚方市広報アドバイザーが従事した職務の遂行に係る情報,枚方市(2016年5月26日)

しかし、このアドバイスは適切だと思えません。彼女は、1967(昭和42)年生まれということからアラフィー(50歳前後)にあたります。だから、こんなアドバイスをしているのかもしれません。

主なFacebookユーザーは、調査結果[2]にあるように40〜60代で、若年世代は利用していません。そして社会的な属性は、いわゆる「リア充」です。ということは、市長の掲げる目標に合致しない層(定年前後のおじさん・おばさん、リア充の40代)に枚方市の魅力を訴えることはできても、市外のリア充があえて枚方市に転入してくるとは思えませんし、市民協働に賛同しない定年前後の独身者が流入してきてしまい、定住者が迷惑すると思います。

目立つ「若手職員」表現

市職員のやる気やモチベーションについて議論されているなか、市長に選任された広報アドバイザーが、このように言及するのはいかがなものでしょう。

3.若手職員の広報力強化の研修について

広報力を強化するには、受け手の視点に立つマーケティング的な発想力と、文章の書き方やチラシデザインなどハウツー的な実務力の2つの視点から学ぶ必要がある。

枚方市広報アドバイザーが従事した職務の遂行に係る情報,枚方市(2016年5月26日)

2.若手職員の広報力強化の研修について

研修の前半は「情報発信について」、後半は「分かりやすいチラシの作り方」というテーマで、それぞれ私と広報課職員が話してはどうか。広報課職員が講師になることで説得力が増すと思う。

枚方市広報アドバイザーが従事した職務の遂行に係る情報,枚方市(2016年6月28日)

では「若手」以外の職員についてはどうなのでしょうか。「若手職員」だけに期待を寄せて、鼻から「若手」以外の職員には期待しないのは差別的な扱いだと思います。役所が職員の個人的な属性(年齢、性別など)を活用して仕事をさせることに違和感を覚えました。

[2] 若者のフェイスブック離れが進む“SNS疲れ”の深層|データで読み解くニッポン|ダイヤモンド・オンライン(2016年3月19日)

人事・給与評価員

就任した2016年4月13日以降、長らく従事していませんでしたが、2016年8月23日に公表されました。

たった1回分の公表資料だけで評価するのは適切だとは思いませんが、市長が選任した3人のアドバイザーの中で、変なことを言っていないのは、この評価員だけです。評価員の意見を見ていきます。

1.本市の人事・給与制度に関する評価について

人事考課において、枚方市では、現状、下位の区分にあたる「B評価」の職員が少ないと感じた。どの自治体にも「B評価」となりうる職員は一定数存在するものである。

(略)

3.給与制度について

(略)

時間外勤務が3年前との比較で1割も増加しているのは課題である。

枚方市人事・給与に関する評価員が従事した職務の遂行に係る情報,枚方市(2016年6月24日)

まず、評価員は「人事評価制度」について意見を述べています。悪知恵が働いていることを指摘しています。

この制度は、議会の会議録を検索すると多くの言及がなされています。会議録には、耳にタコができるくらい「頑張った職員に良い評価を、そうでない職員に悪い評価をつけるべき」という発言が記録されていることから、制度は形骸化していて、職員のモチベーションに寄与していないことは明らかです。

ということは、原因と対策が対応していないのですから、何か別の対策を試せば良いのに、なぜしない?

○総務部長 …(略)…次に、人事評価制度について、お答えいたします。

評価制度につきましては、従来の勤務評価制度、平成19年度に公平性、客観性、透明性の向上に主眼を置きました総合評価制度としまして再構築し、全職員に導入したところでございます。現在のところ、係長までの職員には試行として位置付け、給与などへの処遇反映は行っておりませんが、管理職員には勤勉手当と昇給に評価結果を反映しているところでございます。

平成20年第4回定例会(2008年12月15日)

○総務部長 …(略)…次に、2.人事における総合評価制度について、お答えいたします。

(略)

制度導入の経過につきましては、平成10年2月に勤務評価制度と実績評価制度からなります人事評価制度を導入し、平成12年度には実績評価制度を目標管理制度に改編いたしました。平成18年度には評価の信頼性をより高めるために、勤務姿勢、職務遂行能力、実績区分の要素を総合的に評価いたします総合評価制度に再構築したところでございます。

給与への反映につきましては、勤勉手当の成績率及び昇給号給を対象といたしまして、平成13年度以降、上位の職制から順次導入し、現在、課長代理までを適用範囲としているところでございます。

平成23年第2回定例会(2011年6月23日)

○鍜治谷知宏委員 …(略)…そこで、まず、枚方市における人事評価制度の現状について、お尋ねいたします。

○人事課長 本市におけます評価制度につきましては、理事、部長の管理職員から一般職員まで、すべての職制を対象に実施をしております。

評価ランクにつきましては、課長代理以上の管理職員はAを標準とし、上位区分からSS、S、A、Bの4段階で評価し、係長以下の職員については、同じくAを標準とし、S、A、Bの3段階で評価をしております。

評価結果の取り扱いでございますが、管理職員につきましては、6月、12月の勤勉手当、並びに昇給に反映しております。一方、係長以下につきましては、昇任、昇格におけます判断材料の一つとして活用しておりますが、直接給与への反映は行っていないという現状でございます。

平成24年予算特別委員会(2012年3月15日)

○松浦幸夫議員 2年ぶりの一般質問でございます。よろしくお願いいたします。

まず最初に、職員の評価制度について、お聞きします。

本市の人事評価制度であります総合評価制度は、理事、部長から一般職員まで一応全職員で実施されていると聞いておりますが、管理職員については評価結果を給与へ反映しているとのことですが、係長以下の職員についてはいまだに未反映ということです。…(略)…

(略)

○松浦幸夫議員 3回目です。

私も全くあきれたのですが、職員に示された個人の評価結果を見ますと、全部局S、A、Bの3段階に張り付き、勤勉手当成績率への反映及び昇給への反映については総合評価ランクにかかわらずA評価とし、休暇、休業で勤務実績がなかった職員については評価ランクはAとして取り扱う。C、D、E、Fの下位ランクは処分を受けた者となっています。

総務部長、これは間違いないですか。

○総務部長 現状としましてはほぼAとSという形になり、評価勤務姿勢の悪い職員につきましてはB評価を一部行っております。

平成24年第2回定例会(2012年6月21日)

◯木村亮太議員 …(略)…また、人事評価制度の運用についても少し疑問に感じていることがあります。それは、上司が自分の部下をしっかりと評価できているのかということです。頑張った職員が報われるためには、頑張った職員には高い評価であるS評価を、また逆に、頑張っていない、これからちゃんと頑張っていただきたいと思う職員については低い評価であるB評価をしっかりとつけるべきというところが大事だと感じるわけですが、お伺いするところ、B評価の職員というのは0.2%だけと、ごくわずか、そういう現状になっております。こういったことについては疑問に感じる部分があるのですが、市としての見解を伺います。

平成27年9月定例月議会(2015年12月15日)

◯岩本優祐議員 …(略)…次に、人事・給与制度については、2回目の質問を行います。

技能労務職員の給与制度について、本市では技能労務職員に適用すべき給料表を既に導入されているわけですから、業務実態に合わせ適切な給料表を適用することを優先すべきであり、その適用関係の整理に早急に着手したほうが時間的にもコスト面でも無駄がなく有効と思われるため、調査の必要はないのではないかと考えます。

また、人事・給与制度についてのうち、外部評価について説明をいただきましたが、我が会派といたしましては、これまでから、人事評価制度については、非管理職員につきましても、せめて係長クラスには昇給への反映も導入すべきと考えていますし、現在わずかであるボーナスへの給与反映についても拡充に向けて検討すべきと訴えてまいりました。また、運用面においても、頑張った職員には高い評価であるS評価を、一方で頑張っていない職員には低い評価であるB評価をしっかりとつけることが必要ではないかと問題提起をしてきたところです。

平成28年3月定例月議会(2016年3月4日)

次に、残業が増えているようです。「公務員は安定した高額給与、定時で帰れる」イメージと、実際は異なるのかもしれません。仮に、モチベーションがないために残業が増加していたら、どうなのでしょう。

一方、こちらは「オープンひらかた」として公表されている資料ではありませんが、職員団体は団体交渉で生活の苦しさを訴えています。そこだけ聞くと条件反射的に顔が引きつりますが、職員の数を減らしつつ、中核市へ移行するなど行政サービスを多様化したため、残業代が不足しているという説明は筋が通っています。その結果、職員はサービス残業や仕事の持ち帰り、始業より早い時間に出勤するといった策を取っているという現状があるようです。

I.基本姿勢について

組合

昨年の人勧に伴う改定は増額改定だったものの、一方では給与制度の総合的見直しでは減額改定。公務員の給与水準はこの数年で大きく下がっており、生活は厳しいものがある。こうした状況を認識しているか。

近年、職員の平均給与額が下がってきたことは認識している。

V 勤務時間等に関することについて

組合

予算に限りがあるという問題等もあり、手当を申請しにくい実態があると考える。その結果、サービス残業となっている可能性があるなど、時間数だけでは見えない課題もある。

1人あたりの平均で月9.8時間である。サービス残業の実態については調査したい。

枚方市と自治労枚方市職員関係労働組合の団体交渉の要旨,枚方市(2016年3月8日)

III 有給休暇、時間外勤務の状況及び人員について

組合

年次有給休暇の取得日数は減少し、時間外勤務は増加している、原因について分析しているのか。

時間外が増加している最大の原因は人員不足である。

行政サービスの複雑・多様化、中核市移行など、要因はさまざまだと考えている。

時間外勤務が増加したのは、アクションプランによる職員削減も一因とは認識している。

VII 時間外労働について

組合

サービス残業や持ち帰り残業について、現状、解消に至っていないが、見解を聞く。

始業前の早い時間に出勤し、仕事をしている職員が増えてきていると感じるが、実態を把握せよ。

あってはならないことと認識しており、これまでもヒアリング等を行っているが、今後も必要な対応に努めていく。

一つの課題と認識しているが、所定の勤務時間外の職場の状況についても、まずは所属長が把握すべきものと考えている。

枚方市と枚方市職員労働組合の団体交渉の要旨,枚方市(2016年5月17日)

となれば、職員が人事評価制度に乗り気でない理由は明らかですね。議員は、職員一人あたりの仕事量が増えている事実に目を向けず、給与に減り張りをつけよとしか言っていません。これでは、これからも平行線のままでしょう。人を増やすか、サービスのバリエーションを減らすか、というように考える必要がありそうです。

戦略会議

これまでに開催された5回分の情報を公表しています。「戦略」という言葉の意味から考えると、会議の内容のどこに戦略が存在するのかわかりませんし、戦略について議論された形跡もありません。会議の名称を変更するか、廃止するか、速やかな対処が必要でしょう。これは、進捗の報告を受けて、今後の方針を伝えているだけです。

ちなみに「キキ&ララ」のイベントについて、筆者が「補助金をもらえるから、実施しておきなさい」というノリだと述べたのは、この会議資料[3]から読み取ったものです。ここで疑問を持たれた読者がいらっしゃるかもしれません。市長の提唱している「サンセット方式」は補助金事業の見直し方法ですが、この手法は受け取っている事業の見直しが目的で、新たに補助を受ける場合には吟味せよという意味合いはありません。

[3] 地方創生加速化交付金について(2016年4月12日)を議題とする戦略会議の公表資料から読み取れます。プレスリリース“七夕伝説ゆかりの地”枚方市・交野市 7月2日(土)から「星のまち 枚方・交野 天の川ツーリズム」を実施します(2016年6月10日)の中で「地方創生加速化交付金」を活用していることがわかります。

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