いんちきな実行計画

第5次枚方市総合計画の第1期実行計画には、平成28(2016)〜31(2019)年度の4カ年における、各事業の取り組みを1年ごとに定めています。また、平成28年度6月補正予算、9月補正予算で事業化されたものについても同様に、4カ年における各事業の取り組みを1年ごとに定めています。

この実行計画は公開されて時間が経っているものですが、市はホームページに掲載しているだけで、実際に「市民や市民団体など」と情報を共有できているかどうかは別問題です。ということで、筆者なりに内容を見てみることにしました。

約95%の事業は実行計画になじまない

実行計画には、財源の確保ができていない事業を除くと、全部で172の事業があります。このうち、全体の8割を超える141の事業で、2年目以降の取り組み内容が1年目の取り組みを「推進」もしくは趣旨として推進する表現で書かれていました。それで、どうやって事業の継続を妥当だと判断できるのでしょうか。

これらの事業の取り組み内容を精査したところ、4年間もしくはそれ以降にわたって計画的に取り組もうとしている事業は、たった9つしかありませんでした。これは全体(172事業)の約5パーセントです。実行計画の枠組みにふさわしいといえる具体的な9つの事業名は、次の通りです。

はっきりとした特徴が表れています。実行計画にまとめることによって効果が得られる事業は、建設工事だけです。

上記の事業費を合わせると340億142万6000円で、平成28(2016)年度の総事業費の約28パーセントでした。言い換えると、事業単位では約95パーセント、事業費にして約72パーセントの事業に対して、実行計画の策定と称した無駄な検証作業が行われています。

別の枠組みを検討すべし

つまり、この実行計画をホームページに掲載することで、うち約8割の事業(合わせて856億8111万円)を、だらだらと継続してよいと認めさせたことになっています。行財政改革をしない聖域を作ったも同然です。メスを入れる場所はここにあると思います。

例えば、1年で完結できる事業は1年で切った計画を出させて、また次の年に前年度の取り組みを改善するなり、拡充させるなりした新たな計画を出させて、継続すべき事業だけ継続的な取り組みができる枠組みを作るというような改善が必要ではないでしょうか。市長の提案しているサンセット方式は、補助金事業の見直しを目的としているので、補助を受けない事業に見直しは行われません。

建設工事を除くと適正な計画は1事業のみ

すべてがダメなのかというと、そうではありません。「ヘルシーメニューの開発支援など飲食店を通じた健康づくり推進事業」[1]は唯一、平成29(2017)年度で打ち切る計画になっています。

この事業は、「枚方市独自の基準設定をした『枚方市版ヘルシーメニュー(仮称)』の提供を行う飲食店を募集し、希望のあった飲食店に対し、ヘルシーメニューの開発を支援し、ガイドブックを作成して市民に周知することで、外食を通じて食生活面から個人の健康づくりを支援する」ものなので、だらだらと継続(推進)することは可能です。検証結果を踏まえてから、どうするかを考えると言いつつも、事業は継続させるとしている他の事業がある一方で、この事業だけがいったん終了させる計画になっています。

よって、建設工事の9つの事業のほかに、計画が適正といえるのはたった1事業(概算事業費:32万4千円)だけでした。これら以外の事業は、実質的にノー・チェックです。

[1] これ以外に、4年以内に事業が終了する事業はあります(放課後児童対策事業、枚方小学校少人数教室等整備事業、土地区画整理事業支援事業、高齢者外出支援事業)。これらは、どうやっても物理的に事業を継続させることができない事業のため、評価の対象にしていません。

無尽蔵に人件費を食いつぶす可能性のある事業

「財源確保などの課題解決を図りながら、実現に向けて取り組む事業」に含めず、概算事業費の値を入れていない事業があります。取り組む費用のかからない事業なんて、ありえないでしょ。次の21の事業を事実上タダとしています。

実行計画自体が、職員の労務という観点を含めて作成されていないため、人件費を積算していないのだと思います。しかし、上記の事業の概要から、市職員の時間を多く消費するだろうということは容易に想像できます。だからこそ、概算事業費に数字が入れられていなければならないと思います。何が何でも実行計画の通りに費用を抑える必要はありません。結果が見当違いであれば改めるという、いわゆる「PDCAサイクル」を回せば良いのですから。

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