人が集まっているまち

もう、すでに都市間競争の勝者が出ていますので、筆者が耳にしたところを紹介します。

明石市

2016年7月29日、毎日放送の番組「ちちんぷいぷい」で兵庫県明石市が紹介されていました。いずみふさ明石市長のツイートから、テレビ局に取り上げてもらえた嬉しさが伝わってきます。

本日放送されましたちちんぷいぷいの画像です。明石市の人口増加と子供医療費無料や二人目からの保育料無料など子育て施策についてインタビューをうけました。
明石市の子育て施策詳細はこちらhttps://t.co/2s3VsUqdik pic.twitter.com/iWkKTiQHMO

— 泉房穂(いずみふさほ)後援会 (@izumifusaho) 2016年7月29日

「みんなにいい顔しない」まちづくりだそうです。よく調べてみたら、待機児童ゼロではないみたいですし、枚方市のような幼稚園と保育所の連携を意識した組織もありません。明石市のホームページには枚方市と同じように「住み続けたいまち」という、ありきたりのフレーズが掲げられていますが、転入超過になっています。

枚方市はもともと高齢者に手厚いのに不満タラタラなので、枚方市では明石市のように思い切ったことは無理ですし、第2子以降の保育料の無料化を諦めるほど、お金がありません。

熊取町

2016年8月1日、関西テレビの番組「ワンダー」で大阪府熊取町が紹介されていました。「都会」と「田舎」を合わせた「トカイナカ」という造語で熊取町の魅力を表現しています。

熊取さすがやわ!!w
トカイナカ pic.twitter.com/UcfoERrUqs

— あけん。 (@Akn_0011) 2016年8月1日

熊取町のホームページには「ほほえみ子育て」という専用ページがあって、「自治会加入率はおよそ90%」「住民による自主防災組織率が高い」などといったウリをPRしています。枚方のウリは何かと言われたら、ひらパー、くずはモール、ニトリモール、T-SITE、五六市、ひらつー、くらわんか花火大会…ですかね?

熊取町のホームページでは、きちんと待機児童の数を公表されていませんが、待機児童ゼロにこだわり、死守しているものと伺えます。

枚方市との比較

では、明石市や熊取町を成功事例と見た場合に、枚方市がまるっとコピーをすれば人口流入(転入超過)を達成できるのか、枚方市に何が求められているのかを検討してみたいと思います。

男性の人口・世帯あたりの人数が少ない

男性の人口が少なければ、結婚や出産にはつながりにくいというのは筆者の持論ですが、人口の増加傾向にあった頃は女性より男性の人口が多い特徴がありました。統計を継続的に見ていると、枚方市の場合は人口が減少しているのに、未だ世帯数は増加を続けています。その影響で1世帯あたりの人数が少なくなっているのでしょう。

表1.人口と世帯数[1]
枚方市明石市熊取町
人口(人)405,179293,63844,086
うち男性(人)195,214141,80821,407
うち女性(人)209,965151,83022,679
女性100人あたりの男性人数(人)93.093.494.4
世帯数(世帯)177,258122,78717,630
1世帯あたりの人数(人)2.292.392.50
面積(㎢)65.1249.4217.24
人口密度(人/㎢)622259422557

[1] 明石市は2016年7月1日現在の推計人口。枚方市と熊取町は2016年6月末の人口。

大人の年齢による人口バランスが悪い

年齢による構成比を調べると、実は枚方市の子どもの人口は転入超過の明石市と熊取町の間にあります。子どもの人口というより、生産年齢人口(15〜64歳)の割合は明石市や熊取町より少なく、老年人口(65歳以上)の割合が多いのです。

表2.年齢層・世代別人口と人口比率[2]
枚方市明石市 熊取町
0〜5歳(人)19,536(4.8%)8013(2.7%)2,392(5.3%)
年少人口(人)53,988(13.3%)40,398(13.6%)6,730(14.9%)
生産人口(人)245,129(60.5%)182,281(61.1%)29,172(64.8%)
老年人口(人)106,200(26.2%)75,425(25.3%)9,133(20.3%)

[2] 明石市は2016年7月1日現在、枚方市と熊取町は2016年6月末の住民基本台帳人口。

核家族世帯が多い・3世代世帯が少ない

2010年の国勢調査のデータを使って、枚方市と明石市、熊取町の家族構成を比較してみました。

枚方市と明石市、熊取町を比較すると、枚方市のほうが核家族の割合が高く、3世代家族の世帯割合が少ない特徴がありました。3世代家族では特に出生時からの「夫婦、子供と両親から成る世帯」や「夫婦、子供、親と他の親族から成る世帯」の割合が少ないことが分かりました。

ということは、枚方市で3世代家族を増やすのは難しい。しかもマンションの多い枚方市では物理的な難しさがあります。そして、立命館大学の筒井淳也教授によると3世代家族が増えても少子化対策に繋がるかどうかは、不明だとしています。

――3世代同居は少子化対策として効果があるか。

効果はいまひとつ分からない。ただ、ほかの先進国を見ると、イタリアやドイツなど、子育てや介護のケア労働を主に家族に任せている国は少子化を克服できていない。3世代同居をすれば、家族が子育てや介護を担うことになり、家族の負担が増え、関係が悪くなる。結婚や出産から逃げる女性が増え、家族を持ちたいと思う人がさらに減るのではないだろうか。

――それでも、福井県のように3世代同居が多く、出生率も高いという地域モデルもある。

確かにそういう例もあるが、土地が広く、大きな住宅が建てやすい地域性が関連しているのではないか。都市部ではまず無理だ。一方で鹿児島や宮崎など南九州は3世代同居率は低いが、出生率は全国平均より高い。なのに、なぜ政府はこうした地域に目を向けず、3世代同居を推奨するのか。介護費を抑制したいなど、何かほかの思惑があるのではないか。

私の調査では、最初から親と同居する傾向が強い夫婦が子どもをたくさんもうける傾向があるだけで、そうではない女性が親と同居したからと言って出生率を上げる効果があるかは立証できていない。

――子育て世代はどういう暮らし方が理想か。

同居より親の近くに住む「近居(きんきょ)」の方がいいのではないだろうか。内閣府の子育てに関する国民の意識調査(2012年)では、理想の家族の住まいについて「親と子どもの世帯で、祖父母(夫か妻の親)と近居」と答えた人は31・8%で、「3世代同居」と答えた人より11ポイント以上多かった。そもそも3世代同居を希望する人は少ないという結果も出ている。

危うい少子化対策 3世代同居で子どもは増えるか 立命館大・筒井教授に聞く | どうしんウェブ/電子版(2016年8月3日)

自治会加入率が低い

熊取町の自治会加入率は2014(平成26)年1月末で89.81%という数字しか見当たりませんでした。

枚方市の自治会加入率の推移をまとめました。最新のデータでは7割を切っています。

表3.枚方市の自治会加入率の推移
加入率(%)
2008(平成20)年3月末74.3
2009(平成21)年3月末?
2010(平成22)年3月末74.9
2011(平成23)年3月末73.6
2012(平成24)年3月末73.8
2013(平成25)年3月末72.2
2014(平成26)年3月末71.0
2015(平成27)年3月末?
2016(平成28)年3月末69.9

明石市も減少しているものの、非加入は4分の1くらいです。

表4.明石市の自治会加入率の推移
加入率(%)
2009(平成21)年4月1日80.6
2010(平成22)年4月1日79.0
2011(平成23)年4月1日79.6
2012(平成24)年4月1日79.9
2013(平成25)年4月1日78.5
2014(平成26)年4月1日77.6
2015(平成27)年4月1日76.2

住み続けている人が急に自治会を脱退するとは考えにくく、転入してきた人が地域のコミュニティに加わろうとしないために、加入率が低下するのではないかと考えられます。枚方市の場合は、転出者の減少傾向より転入者の減少傾向が大きいという特徴があって、出生と転入者の減少で人口減少になっています。

転入超過の明石市や熊取町の自治会への加入率が枚方市より高いことを踏まえると、枚方市に転入してくる人が地域のコミュニティに参加しようとしない傾向が強いのかもしれません。どういうところに問題があるのでしょうか?

まとめ

枚方市は歴史的にマンションが多く、ベットタウンのまま今日に至っています。そのことによって核家族が多く、3世代家族を構成しづらいので、たくさん子どもを欲する人が少ない状況に陥っています。だからといって、枚方市で3世代同居の世帯を増やそうとするのは効果的とは言えず、逆の効果が働く可能性があることから、近居を増やす努力をした方が良さそうです。2016年10月から始まる同居や近居への助成制度は、近居では住宅取得費用を補助してくれるものですが、30万円(最大)のお金を出すだけではなくて、枚方市を出て行った人が、あえて枚方市に戻りたくなる、親との近居を魅力的に感じられる「本気」の支援をしなければ、そう簡単に戻ってこない気がします。

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