枚方市の転出超過はいつから?

「最近、枚方市は転出超過が続いている」と認識している人がいらしたら、それは勘違いです。

社会移動を網羅した資料

枚方市制が始まった頃からの社会移動を知りたいと探していたところ、「大阪府統計年鑑」で発見しました。転入と転出の人数は掲載されていませんが、社会増加の推移がわかります。枚方市制が始まった1947(昭和22)年以降の大阪府統計年鑑は昭和25度版から発行、社会増加の掲載は昭和28度版から行われ、途中、昭和30度版、昭和35度版、昭和40度版には掲載されていませんが、ほぼ網羅できています。

ただし、年鑑のデータの取り扱いに注意が必要な点があります。統計をとる期間が「前年9月1日〜その年の10月1日」のため、期間の異なる他の資料とは数字が合わない場合があります。

枚方市のホームページに掲載されている平成25年10月〜平成26年9月の社会増が-993人で、大阪府統計年鑑の平成26年度版に掲載されている社会増加も-993人で一致していることから、転居や職権記載、職権消除などを除いた数字ではないかと思われます。普段、使っている社会増と同様の扱いで問題なさそうです。

昭和54年度大阪府統計年鑑がない

大阪府統計年鑑のホームページが、ややこしいことになっています。想像するに、あるとき紙で保管されている古い年鑑をスキャンした人か、ホームページにアップロードした人が作業の途中で間違えてしまったようです。そのせいで、昭和54年度版の年鑑が見当たりませんでした。もし、データ化したときに紙の年鑑を廃棄してしまっていたら、もうわかりません。

どのような状況になっているかをわかりやすく数学的に表現すると、例えば「和暦N年度」の年鑑に掲載される社会移動は「和暦N-1年9月〜N年10月」の社会移動として「和暦N+1年3月」に発行されます。つまり「和暦N年度」の年鑑は「和暦N年10月1日」時点のデータを掲載していなければなりません。

ところが昭和29年度版〜54年度版として公開されている年鑑の中身が、1年前の昭和28年度版〜53年度版にズレています。昭和55年度版からは正しく中身が一致していますが、この誤りによって昭和54年度版をスキャンしたものがホームページ上にありません。

余談ですが、役所の統計資料に、こんなふざけたことを書いても昔は許されていたんですね。

第3章 人口

概況

昭和42年8月に700万人を突破し、昭和44年1月にナニワ(728万人)の人口に到達した大阪府の人口は、その後も増加を続け、昭和44年10月1日現在744万8,488人と750万人にあとわずかにせまっている。…(略)…

昭和44年度大阪府統計年鑑,大阪府

転入超過のピークは1969(昭和44)年

枚方市は、1969(昭和44)年に転入超過(2万3113人)のピークを迎えました。残念ながらネット上では転入超過の要因となる出来事を見つけられませんでした。その頃の枚方市の人口は21万9759人、5万9203世帯(いずれも昭和45年3月末)でした。単純計算で1世帯あたり3.7人、女性より男性の方が多いというのは、この頃と現在とは異質だったことを認識させられます(現在は1世帯あたり2.3人、男性より女性が多い)。

初の転出超過は1988(昭和63)年

そこから転入超過人数は減少し、およそ28年前に初めての転出超過(社会増加:-14人)を記録しています。その後は、1992(平成4)年、1995(平成7)年、1998(平成10)年、2009(平成21)年の転入超過を除いて転出超過でした。

議会の会議録を調べると、枚方の政治家が人口の減少を議論し始めたのは遅くとも2005年ごろ、転出超過に初めて言及されたのは2014年です。1980年代後半に議論されても良いはずの社会減を約26年間も放置されていたような…(会議録は平成15年からしか検索できませんので、本当のところはわかりませんが)。

市の見解

しかしながら、枚方市は1999(平成11)年に転出超過と述べています。集計期間を「1月〜12月」にしていれば、社会減の認知を10年も遅れさせることができるのでしょうか。

参考資料4 人口動態の推移

(略)

社会動態(転入・転出)については、平成11年から転出数が転入数を上回っており、平成19年、平成21年に社会増となっているものの、平成22年から再び社会減となっています。

枚方市人口推計調査報告書,平成26年1月,枚方市(2014年2月18日)

検証できないので理由を推測するしかありませんが、毎月、ホームページで公表されている人口動態の最も古い数字は1999(平成11)年です[1]。このような文になる理由として考えられるのは、それより前の記録が残っていないものの、1999年は転出超過だったからではないでしょうか。しかしこの文は、仮に筆者のように指摘した場合、「転出超過は、もっと前にもあったかもしれませんが、文書不存在でわかりません」とは逃げられない言い回しです。

枚方市の資料で転入超過になっている2007(平成19)年は、大阪府の資料では転出超過です。

ちなみに、市長が選挙の時に転出超過の様子を示していたグラフ[2]は2010(平成22)〜2014(平成26)年の4年間を描いていました。これは、市長の任期が4年で、連続した転出超過を描きたかったけど、前市長の1期目の最終年(2009年)だけが転入超過になっていたため、外した(2期目だけ描いた)のでしょう。

[1] 人口の推移・動態・外国人人口 - 枚方市ホームページ

[2] 理念・政策|伏見たかし オフィシャルweb

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