去る者(転出者)追わずして、人口減少(転出超過)止まらぬ

市長が打ち出した施策の妥当性を客観的に評価したいと考え、2015年10月の統計表(町名年齢階級別人口表)を用いて、親子の関係にある年代を推定しました。年齢階級同士で相関係数を求めて調べています。

枚方の子どもの親はだいたい30歳後半〜40歳前半

15歳未満の人口比率と各年齢階級について調べると次のようになりました。

表1.15歳未満との相関判定
相関係数r寄与率r²判定
20〜24歳-0.200.04ほとんど相関なし
25〜29歳-0.270.07ほとんど相関なし
30〜34歳0.220.05ほとんど相関なし
35〜39歳0.670.45相関あり
40〜44歳0.770.60相関あり
45〜49歳0.350.12ほとんど相関なし

枚方市では、主に35〜44歳が子育てをしていると考えられます。その半数以上が、いわゆる「団塊ジュニア世代(2015年で41〜44歳の世代)」と考えられます。

もう少し細かく見てみましょう。子どもを5歳未満、5〜9歳、10〜14歳に分けて相関関係を調べました。

40〜44歳は2〜3人、35〜39歳も1〜2人の子どもを育てているような傾向が出ています。30〜34歳は弱いながらも相関関係がでていることから、子育てをしている人もいます。「子育て環境が悪くて、子供を産みたくならない」とは言えません。

高齢者との同居を避ける傾向

では枚方で子育てをしている世代と、その親は同居しているのか、相関関係を調べました。

30代後半の世代とは70代後半、40代前半の世代は60代〜80代前半に相関関係が出ています。いずれの年齢層も負の相関関係です。つまり、枚方市内で近居はしていても、同居はしていません。

ちなみに伏見市長と同世代ではどうなのかを調べました。

表7.45〜54歳との相関判定
相関係数r寄与率r²判定
60〜64歳-0.300.09ほとんど相関なし
65〜69歳-0.540.30弱い負の相関あり
70〜74歳-0.550.31弱い負の相関あり
75〜79歳-0.410.16ほとんど相関なし

65〜74歳の世代と相関関係が出ていますが、やはり負の相関関係です。伏見市長と同世代の市民も親とは近居していますが、同居していません。

若い人と高齢者の分断

枚方市全体としての傾向はどうなっているでしょうか。15歳未満と生産年齢(15〜64歳)、高齢者(65歳以上)の相互に相関関係を調べました。

表8.15歳未満・生産年齢・高齢者における相互の相関関係
(X)と(Y)相関係数r寄与率r²判定
15歳未満人口と生産年齢人口0.260.07ほとんど相関なし
15歳未満人口と高齢者人口-0.720.52負の相関あり
生産年齢人口と高齢者人口-0.860.73強い負の相関あり

生産年齢と高齢者との関係に、強い負の相関が現れました。15歳未満と高齢者にも負の相関関係はありましたが、15歳未満と生産年齢に相関関係はみられませんでした。

要するに、枚方市は若い人の多いところ(生産年齢人口の多い町)と高齢者の多いところに分断されているのです。

30歳前後の親の年齢層は?

最後に、筆者が枚方市から人口流出している世代とみなしている25〜34歳について、その親世代を推定しようと計算しました。その結果が表9と表10です。

どちらも、相関関係は認められませんでした。すなわち、傾向として枚方市に居住している30歳前後の人たちの親は、枚方市内に住んでいないか、もしくは彼らの親は枚方市内に居住していても、彼らは枚方市から転出してしまったのでしょう(ただ25〜29歳には、うっすらと50代〜60代前半の年齢層との相関が出ています)。

まとめ

市長は目先の効果を狙うのではなく根源的な策を

伏見市長は「若年世代」をターゲットにした施策を打ち出しました。若年世代であろう30歳前後の人たちは、仕事の都合で転出して、統計から見えるはずの親子関係が現れません。彼らは市外への通勤に家が駅から遠いことを理由に転出したので、助成金目当てにUターンなんて、してくれないのでは?

一方、伏見市長の年齢に近い40歳前後の人の親は年金を受給している世代です。議会では、子育てと老年夫婦の介護の両立は大変だという指摘がありました。それに世間では、孫の面倒の見られるような祖父母から、毎日、孫の相手をするのは負担が大きくて無理だとの声もあります。

「人口減少」は議会で何度も登場してきたキーワードです。婚姻率上昇のための婚活パーティの開催や、子育て環境の充実といった、目先の問題だけに対応した施策を実行している節があります。しかし、そんなことをしていては結果は出ないでしょうし、結果は出ていません。結婚がしたくなって、子どもを産み育てたくなる根源的な施策を、しっかり考えて出して欲しいですね。

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